こんばんは。
皆さんは、短鎖脂肪酸についてご存知ですか?
そして、免疫との関係性と相関性についてご存知ですか?
短鎖脂肪酸とは?
炭素数6未満の脂肪酸(fatty acid)のことを呼びます。今回の場合ですと、酢酸や酪酸などが当てはまります。
短鎖脂肪酸は、難消化性炭水化物を腸内で分解されたことにより、生じる物質です。
短鎖脂肪酸を、生前する腸内細菌が、善玉菌であることはご存知でしょうか?
短鎖脂肪酸がなぜ必要か?
善玉菌によって産生された短鎖脂肪酸は腸内を弱酸性にするため、酸性に弱い悪玉菌の増殖を抑えることで、発がん性のある腐敗物質の発生を抑えます。
また、短鎖脂肪酸には腸内の免疫機能を活性化させる働きもあり、細菌による感染を予防するなど、腸内環境を整えることも知られています。
ビオスリーのホームページより抜粋しましたが、短鎖脂肪酸は腸内の悪玉菌の増殖を減らす働きをしています。
短鎖脂肪酸と免疫の相関性
本題に入って行きましょう。
短鎖脂肪酸と免疫の相関性について考えてみましょう。
Journal of Japanese Biochemical Society 95(4): 475-482 (2023)
生化学の知見を基に、みて行きたいと思います。
短鎖脂肪酸はT細胞の分化や増殖に大きく影響を及ぼす.酪酸化デンプンを給餌することで大腸内酪酸濃度を高めたマウスでは,大腸の制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)の割合が増加する5).Treg細胞は抗炎症性サイトカインIL-10などを産生し,過剰な免疫応答を抑制する役割を担うCD4陽性T細胞サブセットである.また,自己免疫疾患や炎症性腸疾患,アレルギーなどの疾病抑制・緩和に寄与している.実際,酪酸化デンプンを与えることで大腸内酪酸濃度を高めたマウスに大腸炎を発症誘導した場合,腸管上皮細胞の障害や好中球の浸潤などの炎症反応は抑制される5).酪酸によるTreg分化誘導には,HDAC阻害によるエピゲノム制御が一部寄与していると考えられる.酪酸はTregのマスター転写因子であるFoxp3のプロモーターおよびconserved noncoding sequence 1(CNS1)エンハンサー領域におけるアセチル化を亢進させ,Treg細胞の分化を促進する5, 6)(図1).一方,無菌マウスに酪酸化デンプンを投与してもTreg細胞の増加は認められない.また,マウス大腸TregはClostridiales speciesなどの酪酸産生菌に反応するT細胞受容体を持つ.以上のように,腸管のTreg細胞誘導には,酪酸とともに細菌由来抗原の提示も必要である可能性が考えられる.短鎖脂肪酸をマウスに飲水投与した研究では,酢酸やプロピオン酸投与で大腸Tregの増加が認められている.これはTreg細胞が発現するGPR43依存的なHDAC阻害を介している.しかし,酪酸とは異なり,プロピオン酸はナイーブT細胞からTregへの分化を誘導するのではなく,TregにおけるFoxp3などの遺伝子発現増加や細胞増殖を促すことで,Treg細胞の恒常性維持に寄与していると考えられる(図1).以上のように,短鎖脂肪酸はTreg細胞の誘導・維持を介して炎症反応の抑制に寄与している.
形質細胞などから産生されたIgA抗体は二量体として腸管管腔に分泌され,病原菌やその毒素の排除・中和だけでなく,腸内細菌にも結合することで菌と宿主の共生環境構築に寄与している.無菌マウスにおいては腸管IgA産生細胞がほとんど存在せず,腸内細菌の定着によって誘導される.また,IgAを欠損したactivation-induced cytidine deaminase(AID)欠損マウスでは,セグメント細菌をはじめとする腸内細菌が過剰に増殖する.菌体成分がToll様受容体を介してIgAを誘導することが広く知られているが,短鎖脂肪酸も腸管におけるIgA産生やその特異性に影響する.
マウスに高食物繊維餌を与えた際,短鎖脂肪酸の増加に伴い便中IgA濃度が増加する7, 8).ヒトにおいても,便中短鎖脂肪酸濃度とIgA濃度は正の相関を示す9).個々の短鎖脂肪酸をマウスに飲水投与した場合,プロピオン酸投与で腸間膜リンパ節のIgA産生細胞が増加し,腸管管腔内IgA濃度やIgAに結合した腸内細菌の割合が高まる7).また,in vitroの試験においては,酢酸,プロピオン酸,および酪酸のいずれの刺激下でもB細胞のIgA産生が誘導される7).短鎖脂肪酸はB細胞のHDACを阻害し,クラススイッチ組換えに関わるAID遺伝子(Aicda)制御領域のヒストンアセチル化を促進する(図1).また,短鎖脂肪酸は脂肪酸代謝や解糖活性といったB細胞の代謝に影響を与える.このように,短鎖脂肪酸はB細胞に直接作用し,遺伝子発現や代謝を制御することでIgA産生細胞への分化を促進することが示唆されている。また,B細胞はGPR41やGPR43を発現しておらず,短鎖脂肪酸のB細胞への直接的作用はこれらの受容体非依存的だと考えられる.一方,GPCR依存的なIgA産生誘導も報告されている.GPR43欠損マウスでは腸管IgA産生が減少し,IgAに結合した腸内細菌の割合も低下する10).筆者らは飲水投与した酢酸がGPR43依存的に腸管IgAを増加させることを確認しているが,この効果はT細胞欠損マウスでも再現できる.B細胞はT細胞依存的または非依存的にIgA産生細胞へのクラススイッチ組換えが誘導されるが,この結果は酢酸がT細胞非依存的にIgA産生を増加させることを示している.実際,酢酸は樹状細胞からのレチノイン酸産生を増加させることでB細胞のIgAクラススイッチ組換えを促進することが示されている10).酪酸化デンプンを投与したマウスにおいても大腸でのIgA濃度増加が確認されており,これにも酪酸による樹状細胞のレチノイン酸産生増加が寄与していることが示唆されている8).また,酪酸の樹状細胞への作用にはHDAC阻害とGPR41/109aシグナル活性化の両方が寄与している。
まず、前者は、制御性T細胞について、後者は、IgAについてです。
短鎖脂肪酸との関連性については、この引用抜粋から明らかになっています。
むちゃくちゃ簡易的に書いてしまうと、短鎖脂肪酸は、制御性T細胞やB細胞に関与して、免疫機能や反応に正の反応へ寄与する働きがある。って言う事ができます。
という事は、腸内環境に短鎖脂肪酸がなくなれば、腸内pHが高くなる事、免疫反応にも弊害が起きるという事がわかります。
ということは、免疫力を高めるためには、根底にある腸内環境や腸内細菌叢のあり方すべてを、変える必要があるという事になります!
以上で、終わります。